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脱毛の照射時間はなぜ0.1秒?温度と時間のバランスを熱力学で解説|65℃以上が必要な理由

2026-10-29 ・ 文:八木 貴大(salon and.)

「出力をMAXにしたら、もっと早く終わるんじゃないですか?」「光って一瞬しか当ててないけど、あれで足りてるんですか?」——カウンセリングで、ときどきいただく質問です。

どちらも、答えのカギは同じところにあります。光脱毛の効果は「何℃まで温めたか」だけでなく、「その温度が何秒続いたか」との組み合わせで決まる、ということです。

今回は、salon and.がなぜ1ショット0.1秒未満の照射で、毛乳頭まわりの目標を65℃以上に置いているのか。その「時間と温度のバランス」を、熱力学の考え方から解説します。

熱の効き目は「温度×時間」で決まる

身近な例で考えてみましょう。卵です。

沸騰したお湯(100℃)でゆでると、10分ほどで固いゆで卵ができます。一方、温泉卵は65℃前後のお湯に30分ほどつけて作ります。そして40℃のお風呂くらいのお湯なら、何時間つけておいても卵はほとんど固まりません。

つまり、同じ「卵が固まる」という変化でも、温度が高ければ短い時間で、温度が低ければ長い時間をかけて起きる。そして、ある温度より低いと、時間をかけてもほとんど進まない。熱の効き目は、温度と時間をセットで考える必要があるんです。

この考え方を数字で扱うのがサーマルドーズ(熱の量の目安)です。体の組織では、約43℃を超えたあたりから熱による変化が進みはじめ、そこから1℃上がるごとに、変化の速度が約2倍になるとされています。

「0.1秒未満」だから、65℃以上が必要になる

サーマルドーズの「1℃で約2倍」を、逆から見るとこうなります。

  • 温度が1℃高いと、同じ変化に必要な時間は約半分
  • 温度が5℃高いと、必要な時間は2×2×2×2×2で約32分の1
  • 温度が10℃高いと、必要な時間は約1,000分の1

脱毛の目標温度として「60℃」という数字を見かけることがあります。でも、それは温度がある程度の時間続くことが前提の話です。

当サロンの機器は、1ショットの照射時間が0.1秒未満。熱が毛乳頭まわりにとどまる時間は、ほんの一瞬です。その一瞬で、生えにくい状態へ導くのに十分な「熱の量」を届けるには、温度を一段上げる必要があります。単純計算でも、60℃から65℃に上げるだけで、必要な時間は約32分の1。だからsalon and.では、毛乳頭まわりの目標を65℃以上(65〜70℃)に置いて出力を設計しています。

ここがポイント

「何℃を目指すか」は、「何秒当てるか」とセットで決まります。照射時間が短い機器なのに、長い時間を前提にした温度のまま設定すると、熱の量が足りなくなります。目標温度の数字だけを切り取って比べても、あまり意味がないんです。

じゃあ、もっと長く当てればいいのでは?

「温度を上げるのが大変なら、照射時間を長くすればいい」と思うかもしれません。ところが、ここで効いてくるのが「熱は逃げる」という性質です。

温められたものは、そのそばから周りへ熱を逃がしていきます。そして、小さいもの・薄いものほど早く冷め、大きいもの・厚いものほどゆっくり冷める。薄いせんべいはすぐ冷めるのに、分厚いステーキはなかなか冷めないのと同じです。

光脱毛では、この「冷めるスピードの違い」を利用しています。

  • 肌の表面:とても薄いので、光で温まっても熱がすぐ逃げていきやすい
  • 毛と毛の根元:黒い色素(メラニン)が光をたくさん吸って熱を生み、熱をためこみやすい

照射時間がちょうどよければ、肌の表面は熱を逃がしながら、毛の根元にはしっかり熱をためられます。ろうそくの火の上を指でサッと通っても熱くないのに、止めるとすぐ熱くなるのと似ています。

ところが照射時間を長くしすぎると、毛の根元にたまった熱も、周りの皮膚へじわじわ広がっていきます。温めたい場所だけを温めるはずが、温めたくない周りまで温まってしまう。皮膚は約43℃から「熱い・痛い」と感じはじめるので、これは痛みや肌への負担につながります。痛みと熱の関係は「脱毛はなぜ痛い?」の記事でくわしく書いています。

短すぎても、うまくいかない

逆に、照射時間を極端に短くして、強い光を一気に当てればいいかというと、そうでもありません。あまりに短い時間に光を詰め込むと、温度が急に上がりすぎて、肌の表面が熱を逃がす時間もなくなります。

つまり照射時間は、

  • 長すぎる → 熱が周りに広がり、肌まで温まる
  • 短すぎる → 温度が急に上がりすぎて、肌の表面が熱を逃がしきれない

という両側の制約のあいだで決める必要があります。これが「0.1秒の勝負」です。

0.1秒単位で調整する理由

このちょうどいいバランスは、人によって、部位によって変わります。

毛の太さで「冷めるスピード」が違う

さっきのせんべいとステーキの話と同じで、太い毛は熱をためこみやすく、細い毛は冷めやすいという傾向があります。

  • 太く濃いヒゲ:熱がたまりやすいので、時間配分に比較的余裕がある。そのぶん熱が生まれる量も多いので、上がりすぎないよう気をつける
  • 細い毛・回数が進んで細くなった毛:熱が逃げやすいので、短い時間で効率よく温める配分を考える

肌の色や状態も関わる

日焼けした肌や色黒の肌は、表面のメラニンが光を吸って熱を生みやすくなります。こういうときは、照射時間だけでなく、光の波長(カットフィルター)も組み合わせて、肌の表面に熱がたまりにくい設定を考えます。

salon and.の機器は、0.1秒未満の照射時間を0.1秒単位で調整できます。料理でいえば、フィルターは「どの火を使うか」、照射時間は「どれくらい火を当てるか」、出力は「火の強さ」。この3つを、その日の毛と肌に合わせて組み立てています。だから毛の状態を見るために、来店日は剃らずに来ていただいています。

毛の太さ・濃さ、肌の状態、熱の感じ方には個人差があります。設定は、パッチテストや毎回の反応を確認しながら調整します。

「出力を上げれば効く」ではない理由

ここまでをまとめると、冒頭の「出力をMAXにしたら早く終わる?」への答えが見えてきます。

大事なのは、毛乳頭まわりに、必要な温度を、必要な時間だけ届けることです。それより多い熱は、毛のためではなく周りの皮膚を温めることに使われてしまいます。出力を上げすぎても、毛が生えにくい状態へ向かうスピードはそれほど変わらないのに、痛みと肌への負担は増えていく。

また、光が熱を毛の根元まで届けられるのは、根元とつながっている「成長期」の毛だけです。どれだけ出力を上げても、その日に成長期でない毛には熱を届けられません。回数がかかる理由は「脱毛はなぜ1回で終わらない?」の記事で解説しています。

だからsalon and.では、「最大出力」ではなく「その人にとってのちょうどいい熱の量」を、温度と時間の両方から設計しています。

まとめ

  • 熱の効き目は「温度×時間」で決まる。高い温度なら短い時間で、低い温度なら長い時間で同じ変化が起きる
  • 43℃を超えると、1℃上がるごとに変化の速度は約2倍(サーマルドーズ)。5℃上がれば必要な時間は約32分の1
  • 照射時間が0.1秒未満と短いので、毛乳頭まわりの目標は60℃ではなく65℃以上
  • 照射時間は長すぎると肌まで温まり、短すぎると温度が急に上がりすぎる。そのあいだのバランスが大事
  • 毛の太さや肌の状態で最適な時間は変わるので、0.1秒単位で調整している
  • 出力を上げすぎても効果はそれほど変わらず、痛みと肌への負担が増えるだけ

「自分の毛には、どんな設定が合うのか」は、実際の毛と肌を見ないとわかりません。まずは1部位から体験してみてください。その日の毛の状態を見ながら、どんな考え方で設定を組んだのかもご説明します。

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